[つぶやき]異端審問(魔女裁判)とパウロ・コエーリョのAleph、グラナドスの「愛と死」~木星が蠍座最後を通過するとき

高橋ともえ

私には、季節ごとに急に読み返したくなる本(小説)があります。秋の季節に一番読み返したくなるのが、アルケミストの作者であるパウロ・コエーリョのAlephという小説です(※邦訳はまだありません)。

>>>パウロ・コエーリョ Aleph(アレフ)

この小説のあらすじをざっくり説明すると(本の裏表紙をざっくり和訳)、

コエーリョは、アフリカからヨーロッパとアジアを横断してシベリア鉄道経由で旅をしながら自分のエネルギーと情熱をもう一度活性化しようとしていた。しかし、ヒラールに会おうとは決して思わなかった。彼女は、若い才能あるバイオリニストであり、500年前にスペインで生きていたときのコエーリョが愛した女性だった。そして、この女性のことをコエーリョは、自分の臆病さによって裏切ってしまったのだった。そしてこのことが、今回の人生においても彼が真の幸せを見出す妨げになっているのだった。

ヒラールとコエーリョは、一緒に時空を越える神秘的な旅に出て、人生において避けることのできない挑戦を克服するための愛、赦し、そして勇気を教えてくれる道を歩むことになるのである。

というものなのですが、500年前スペイン・コルドバで生きていた時代のコエーリョとヒラールの間に起きた裏切りというのは、全く罪のない8人の少女たち(その中にヒラールの過去生である少女も含まれていた)が、魔女の疑いをかけられて異端審問の結果火炙りの刑になってしまうというときに、その当時ドミニコ派の修道士だったコエーリョは、保身のために彼女たちを見殺しにしてしまった、ということでした(過去生のコエーリョは、少女たちが無実と知りながら助けなかった)。

うーん、これ、男女の間のふか~~~い闇、みたいな感じですよね。信頼や愛が一瞬で崩壊し、憎しみと絶望に変わる。
ものすごい傷だし、後悔だし、トラウマ。まさに、蠍座的なww

この本では、ヒラールとコエーリョが、この深く暗い過去生を一緒に紐解き、「赦し」という体験を共有することで、お互いを解放して人生の次のステージに進むまでが描かれています。

この本の中に、ヒラールが唱える赦しの祈りがあるのですが、それを英文のまま引用しておきますね。

I forgive the tears I was made to shed,(私は、流さなければならなかった涙を赦します)
I forgive the pain and the disappointments,(私は、痛みと失望を赦します)
I forgive the betrayals and the lies,(私は、裏切りとうそを赦します)
I forgive the hatred and the persecution,(私は、憎しみと迫害を赦します)
I forgive the blows that hurt me,(私は、私を傷つけた攻撃を赦します)
I forgive the wrecked dreams,(私は、ダメになってしまった夢を赦します)
I forgive the still-born hopes,(私は、日の目を見ることがなかった希望を赦します)
I forgive the hostility and jealousy,(私は、敵意と嫉妬を赦します)
I forgive the indifference and ill will,(私は、無関心と悪意を赦します)
I forgive the injustice carried out in the name of justice,(私は、正義の名のもとに行われた不正を赦します)
I forgive the anger and the cruelty,(私は、怒りと残酷さを赦します)
I forgive the neglect and the contempt,(私は、無視と侮辱を赦します)
I forgive the world and all its evils.(私は、世界と世界のすべての悪を赦します)

出典:Paulo Coelho: Aleph

この祈りの最後の、「私は世界と世界のすべての悪を赦します(I forgive the world and all its evils.)」っていうのが、なんか蠍座的。と思いました。

ちなみに、この本を私が読んだのは、今から数年前、多分2014年かな?ちょうど蠍座の最後に土星が滞在していたときのことです。出張で訪れたフランクフルトの空港で買って日本へのフライトの中で読みました。

で、この本を読んだときに思い出していたのは、それから遡ることさらに12年ほど前の、ちょうど2000年前後のころのことでした。ちょうどドイツで最初の留学をしていたときですね。

実はこのとき、現地の大学でカトリックの司祭兼教授をしている先生が、「魔女狩り(異端審問)の真実と嘘」という入門ゼミ(教養ゼミ)を開いていて、それになぜか東洋のドイツ語も大してできない留学生の私が出席したんですよねw あまり人気のないゼミだったおかげで、色々サポートしてもらえました。出席人数7人くらいしかいなかったですね。

そこで分かったのは、この数百年の前のヨーロッパ宗教史の闇歴史が、未だ現代に至るまで多くの批判の対象であり、特に若い学生たちにとっては、自分たちの父祖の恥ずべき歴史のようなものだととらえている、ということでした。

ゼミの最初に先生が、「君たち、魔女狩りについて「知っている」ことを何でも挙げてください」と問いかけたところ、出るわ出るわ、●●万人死んだとか、やれカトリックのはずべき犯罪だとか、ハーブ好きな賢い女性がターゲットの女性蔑視思想のせいだったとか、etc.・・・学生たちから批判のトーンの混じった攻撃的な発言が、先生に次々にぶつけられたんですね。

で・・・その感情的だったり批判的だったりする一つ一つの学生からの発言に対して、この先生は、膨大な史料を元に、何が事実として伝えられていることで、何が違うかというのを丁寧に教えてくれたんです。

このとき感じたのは、煮詰まってこんがらがったネガティブな感情を癒やすときに、ポジティブな感情とか感情の吐露で対処しても意味がなくて、むしろ、無知蒙昧を啓く高次の真理の光で正しく見る、ということが絶対に必要なんだなということでした。(これが、蠍座から射手座へのサインの変化ともつながっているなと思います)

先生は、史実を大切にしていたので、西洋史でこの辺りを研究した人たちなら知っている15世紀の「魔女に与える鉄槌(Malleus Maleficarum)」という悪名高き魔女裁判・異端審問を加速化させることになった本とかも読んだり・・・。

ちなみにこの本は、いかに効率よく人を魔女かどうかを見抜くための方法が書かれています。

あ、ちなみに私、魔女って言葉は嫌いです。

日本では、ポップな感じで薬草魔女とか、ハーブ魔女とかアロマ魔女とか言う方もいますが、私は「魔女」って言葉を聞くと心臓の動悸が早くなって苦しくなってしまうので、極めて苦手ですね。

という余談はさておき。

このゼミに出てとてもよかったのは、そのカトリック司祭兼教授のまだ40代くらいの若い男性の先生の誠実な態度でした。なんかその先生に出会えて救われたなあ!という気がしたんですよね。

それが、およそ14年もの時を経て、コエーリョのAlephという異端審問・魔女狩りと赦しをモチーフにした小説を読んだときに、「ああそうか、あの先生から私は『誠実さ』を受け取りたくて授業を受けていたんだなー。そしてあの先生は、私達学生から『赦し』を受け取りたくてあの仕事をしていたんだなー。」って思ったのです。

異端審問で命を落とした人は、ヨーロッパのみならず新大陸にもいて、その数数百万と言われていますので、今の日本で生きている人でも、過去生のどこかで被害者になったり加害者になったりしている体験をしている人はとても多いと思います。まあ、私も多分人生のどこかでその体験はあるのでしょう。

私がこの授業を受けていたときのこととして思い出すのは、しとしと降る秋雨(ドイツは11月は最悪に暗い季節)の中、人気のあまりない教室で、先生が、ときに突っかかったり揶揄する学生に対しても腹を立てることなく、この難しいテーマを着実に丁寧に明らかにしてくれるたびに、薄暗い教室の中に光が灯るような感覚があったことですね。

今から思うと、ああいうおもーいくらーいふかーいテーマを扱うのですから、一種の浄霊というか成仏みたいなことも行われていたのでしょうね。そしてもちろん、私の中にある、顕在意識では忘れてしまっている過去の暗い体験の記憶も癒やされたのだと思います。この光は、先程も書いたように、無知蒙昧を啓く高次の真実の光なのでしょう。

その先生とのご縁はそれっきりだし、名前も忘れちゃいました。まさにコエーリョの例の小説の中でも、コエーリョとヒラールは短期間だけ深く関わって、その後は会うことはなかったと書かれているように。

なんか、蠍座っぽいなあって思うんですよね。裏切りと誠実さ、愛と憎しみ、コインの裏と表のようだけど同じことなんですよね。蠍座って、この両極が反転する瞬間にいつも居合わせているような気がします。

ちなみに、このコエーリョの小説にぴったりな音楽があるのでご紹介しておきますね。エンリケ・グラナドスのゴイェスカス(ゴヤ風)の中にある、「愛と死」という曲です。愛と憎しみが交差する感じや、天上的な部分と官能的なパートが入り乱れていて、とっても蠍座っぽいですよw

そんなふうに蠍座木星期を振り返る今日は、木星が蠍座最後の29度を進行中ですね。サビアンだとハロウィンの悪ふざけですね。

私は、出生図でアセンダントと天王星が蠍座の29度なので、蠍座の最後から射手座にかけての、この闇が極まって煮詰まった感のある出来事と、それに対して徐々に光が見えてくるような感覚はもともと生まれたときから持っているわけですがw、改めて自分の人生の中にある一つの要素だな~と、この度数を天体が刺激するときには感じます。

つまり、こういうある種の「極」を見てみたいから、魔女狩りとかの体験も選んだのだろうし、今回の人生でこの先生と出会って光を受け取ってもいるのでしょう。

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ABOUT ME
高橋ともえ
高橋ともえ
星読み風水師
1981年生まれ。 魂の可能性を緻密に描き出すドイツ系西洋占星術と陰陽五行説に基づく日本の卍易風水を組み合わせて「魂の高揚感を地に足をつけて楽に生きる」お手伝いを講座やセッションを通して提供しています。 訳書に、『ヒーリングエンジェルシンボル』(ヴィジョナリーカンパニー)、『四気質の治療学』(フレグランスジャーナル)がある。詳しいプロフィールはこちらから。
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