森と里のはざまで孤独を受け入れられる自立した母性~「おおかみこどもの雨と雪」と蟹座の季節の学び
先日の7月10日新月(蟹座の新月)ごろに思い立って改めて見てみた映画(アニメ)があります。それが、「おおかみこどもの雨と雪」です。
私の活動がタロットカードの「月」との交流から生まれているという話は、このブログでちょこちょこ語っておりますが、その「月」から時々テーマが与えられます。
※こちらのカードは、ママンミユキさんのタロットです~!とてもかわいいマルセイユタロット。
先日行った双子座水星逆行スペシャル振り返りムーンノートワークの場合は、タロットカードの「月」に描かれているザリガニの生態を調べる流れになりました。
で。6月末にいったんスペシャルワークは終わりましたが、次なるお題として出てきたのが「狼(おおかみ)」なのですよ・・・(笑)
実は私「狼(おおかみ」といえば、欧米では大大大ベストセラーになっているのに、日本では絶版になってしまっているこちらの本がここ1年くらいずーっと気になっています。この本は、天使の仕事で知り合ったイングリットから、会ったその日にすすめられたものです。
Women Who Run With the Wolvesは、著名な女性のユング心理学者が、女性の中にある野性性(野生)について、狼というメタファーを使いながら文学的に表現した名著です。アメリカから火がついて全世界で何百万部と売れているらしい、女性性解放のバイブルなのだそうです。
ちなみにこの本をすすめてくれたイングリットは、30歳のときに子ども2人とスーツケース2つを持って離婚して、その後キネシオロジストとしてめちゃくちゃ忙しい生活を送りながら、天使の仕事に導かれていったというパワフルな人です。超美人で、会ったときに50歳でしたがとてもそうは見えない若さでしたね・・・。
※彼女についてはこちらのnoteにも書いているよー
で。
この本が扱っているのは、Wild Woman(野生の女)という元型なのですが、正直、Women Run With the Wolvesは、日本ではあまり流行らなかったんですよねー。
じゃあ、日本の女性というか日本の神話の中にはWild Womanの元型はないのかというと、そんなことは全くない、と気づいたのが、「おおかみこどもの雨と雪」を見ていたときでした。
なぜかというと、タロットの「月」のカードって、狼2匹(一説では狼と犬)と月の女神様がいるじゃないですか。
これが、イングリットのことであり(イングリットは子どもが2人いる)、「おおかみこどもの雨と雪」の花(母親)&雨(息子)&雪(娘)のことであると気付いたんですよ(笑)
ある意味で言うと、「おおかみこどもの雨と雪」は、日本版のWomen Who Run With the Wolvesなのです。
「おおかみこどもの雨と雪」のあらすじはこちら:
大学生の花(宮﨑あおい)は、彼(大沢たかお)と出会ってすぐに恋に落ちた。やがて彼が人間の姿で暮らす”おおかみおとこ”だと知ることになったが、花の気持ちが変わることはなかった。そして一緒に暮らし始めた2人の間に、新たな命が生まれる。雪の日に生まれた姉は≪雪≫、雨の日に生まれた弟は≪雨≫と名づけられた。
雪は活発で好奇心旺盛。雨はひ弱で臆病。一見ごく普通の家族だが、生まれてきた子供たちは、「人間とおおかみ」のふたつの顔を持つ、≪おおかみこども≫だった。そのことを隠しながら、家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らし始める。つつましくも幸せな毎日。しかし永遠に続くと思われた日々は、父である”おおかみおとこ”の死によって突然奪われてしまった―――
取り残された花は、打ちひしがれながらも「2人をちゃんと育てる」と心に誓う。そして子供たちが将来「人間か、おおかみか」どちらでも選べるように、都会の人の目を離れて、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住むことを決意した。
で、この話はどういう結末になるかというと、息子(雨)の方は、山の世界に自分の居場所を見つけて完全に狼として生きることにし、娘(雪)の方は、里に下りていって普通の人間の子どもとして生きることになるんです。
そしてその子どもの成長を静かに愛を持って見守る人間の母・花。
ある意味ではこの話は花という女性の成長ストーリーなのですよね。
私がこのアニメを見ていて強烈に印象的だったのは、花が移り住んだ田舎町の古民家というのが、少し人里離れた山の中にあって、森と里の境界線上にあるということ。
子どもたちは、ある時は里へ下りていって人間として暮らし、ある時は森へ入っていき狼として暮らします。やがて、2人の子どもは別々の世界に住み始めるのですが、ずーっと花の立ち位置は、この森と里のちょうど真ん中なのです。これは、子どもたちがそれぞれの道を歩むと決めてからも変わらない。
もう一度タロットカードを見ると、月はいつも真ん中にあって、狼たちは月を見ているように思えます。
左右に1匹ずついる狼は、一説では狼(野生そのまま)と犬(人間への忠誠心のある野生、飼いならされた野生)であるとも言われていますね。
マルセイユタロットでは、バージョンは様々ありますが、この2匹の狼(あるいは狼と犬)は違う色で描かれることが多いように思います。
ある説によると、マルセイユタロットの世界において、青は精神性を、肌色は獣性(野性)を表しているらしいのですが、それに照らし合わせるとタロットカードの「月」の中に描かれている2匹のイヌ科の動物は、人間的でもあり動物的でもある人間の内なる感情を示している気がします。
Women Who Run With the Wolvesでも、「おおかみこどもの雨と雪」でも、人間であること(精神性に寄っていること)、狼であること(野性的であること)、どちらも肯定されています。そして、超重要ことがあって、それは、人間の女性は、この2つを常に内側に抱えていて、いざというときにはこの2つを切り替えられる、どちらも肯定できて、バランスを取ることができる潜在能力を持っているということなのです。
いつも野性的にふるまうのではなく、かといって野性的な部分を抑圧するのでもなく、「時」を知って適切にそのタイミングでふるまいを変えられる。これが、タロットカードの「月」の母性のある側面だと思います。
そう、単なる野性的な直感や激情や奔放さだけではなく人間性(精神性)の深い慈悲と慎重さもあって、その2つをいつでも等しく使いこなせる状態というのが、Wild Womanの特性であり、おおかみこどもの雨と雪の中で描かれている花の女性性(母性)なのです。
そしてこれは、子どもを持つ持たないにかかわらず、性別に関わらず、私たち一人一人が持っている母性の理想的な在り方なのではないかと思います。
話は変わりますが、先日、セルフコンパッションという概念を世に広めたKristin Neffのインタビューをある雑誌で見かけました。
彼女曰く、セルフコンパッションには2種類あって、Tender Self-compassionと、Fierce Self-compassionの2つがあるというのです。
Tender Self-compassionは優しいセルフコンパッション。いわば慈悲深い母、養育する優しい母のイメージです。セルフコンパッションというと、どちらかというとこちらのイメージが強いでしょう。優しいおっかさん、どこまで受け容れてくれる母のイメージ。
しかし、このTender Self-compassionは、Fierce Self-compassionとペアになっていなければ不健全になります。
Fierce Self-compassionは怒れるセルフコンパッション。Kristin Neffは、これをMama Bear(母熊)と表現しています。自分の子どもを守るために全力で戦う母熊の強さ、あるいは、地震でがれきの下に埋まった子どもをあり得ない力で救出してしまう母親の野性的な力、そういうものの源泉にあるのが、Fierce Self-compassionです。
Fierce Self-compassionは、時に女性が発揮することが難しく社会的にもその要素を良くないものとしてジャッジすることが多いけれど、それを発揮している女性を見ると、結構美しかったりしますよね? 「もののけ姫」のサンみたいな、むき出しの野性的な正義の怒り。アシタカが「そなたは美しい」って言ったあれですww
「おおかみこどもの雨と雪」では、花はにこにこ笑っている可愛らしい若い女性として描かれていますが、彼女の中にアウトサイダーになってでも自分の信念を守る強さがなければそもそも狼男と恋愛して子どもを作ることもなかっただろうし、さらに狼男が死んでから一人で秘密を守ったまま山奥で子育てなんてできないですよね。そして、いざとなったら子供たち自身の選択に介入せず、それぞれの子どもが自分にとってのベストの道を選べるよう見守るということもできない。
タロットカードの「月」の意味として、自分の直感を不安でも信じるというものがありますが、まさにこれを体現しているのがWild Womanであり花なのだろうなーと感じました。
母性の蟹座の季節に学んだことです。