蠍座は3回変容(メタモルフォーズ)する~鷲(イーグル)、蠍(スコーピオン)、白い鳩(聖霊)
西洋神秘学では、蠍座(Scorpion, Scorpio)にあたる星座は、過去は鷲(イーグル)として描かれていました。現在、蠍座が地を這い死の一撃をもたらす蠍のイメージで描かれていますが、未来において蠍座は白い鳩(聖霊)となると言われています。
この記事では、蠍座という星座(サイン)の過去・現在・未来の変遷について説明していきます。
この記事の目次
蠍座は、かつては鷲(イーグル)だった
以前、ライオンズゲートに関する記事で、固定宮15度(牡牛座15度、獅子座15度、蠍座15度、水瓶座15度)はそれぞれ、ブルズゲート、ライオンズゲート、イーグルズゲート、エンジェルズゲートと呼ばれる、という話を書きました。
ここで、蠍座15度は、なぜかイーグルズゲート=鷲の門と呼ばれています。
実は、古代において蠍座は、鷲(イーグル)として表現されてきました。
たとえば、タロットカードの「世界」でも鷲が描かれています。
蠍座というサインは、実はかつては鷲だったのです。
蠍座=鷲(イーグル)のイメージの背後にある地球由来の古い霊能力
鷲は、王者のイメージで語られる動物であり、古今東西王権や権力と関わります。高い視点からすべてを睥睨することができる力を持っている天空の覇者だからです。
蠍座は、人智学系占星術(Astrosophy)の研究者であるWilli Sucherによると、地球由来の古い霊能力と関連している星座です。
私達がいわゆる「霊能力がある」と考えるような、霊視力(clairvoyance)、予言者(神のことばを預かる預言者ではない)や、先住民族系の人たちのシャーマン、あるいは「子供の頃から神秘体験をしていました」的なナチュラルサイキックは、シュタイナーによると古い霊能力であると考えられています。
これらの能力は、偉大な地球という女神的な存在が過去に人類と共に次元降下し物質界に沈み込む前に携えていたものであり、古代人たちは、神聖な存在だった地球由来のこれらの霊能力の恩恵を受けていました。
古代はまだ、地球(大地)が十分に天界とつながっていたため、地球由来のこうした霊能力は、「正しい」「善なる」ものでした。
たとえば、縄文時代とかもっと古い時代には、大地の中から湧き上がってくる火山性の蒸気やエネルギーを受けて、巫女たちが神がかりになって予言する、というようなことが行われていましたが、それらの大地の中から湧いてくるようなエネルギーは、人間に対して悪さをするようなものではなかったのです。
しかし、ここからがとても大切なのですが、こうした古い霊能力は、時代が移り変わり、物質界への降下が進むに連れて、むしろ人間の魂を脅かす可能性のあるものに変化していった、とシュタイナー・人智学系の思想では考えます。
蠍座は、古い時代の霊能力が失墜し冥界に下ったことを示す現在の状態
現代でも、私達はこうした古い霊能力の先祖返り的なあらわれをここかしこで目にしますよね。単純なところでいうと、占いもそうですし、オーラを読みますとか、ウィッチクラフト的なものとか、先住民族的な人たちが継承しているシャーマン的儀礼とかもこれら古い霊能力のバリエーションだと言えます。
しかし、古代では正しかったものではありますが、これらの「大地の内部から湧いてくるエネルギーを使う霊的行為」は、現在では魔的なものと非常に結びつきやすく、いわゆる黒魔術的な禍々しい世界、冥界的な世界からの誘惑を受けやすい状態にあります。
現在、蠍座として地球由来の霊能力が表現されている理由は、このような霊能力が、冥界や魔的なものと関連するということを示しているのです。
また、地球由来の力、特に地球内部の力は、いわゆる霊能力として表現されているものだけではなく、宝石や鉱物などとも関わります。
現代文明において、金、銀その他の鉱物が果たしている役割は極めて大きく、鉱物の下支えなくしては私達の高度な文明社会は成り立ちません。同時に、これらの鉱物はときに人間にとって大きな害悪になる可能性もあります。原子爆弾、原発などはもちろんのこと、レアアースを巡る熾烈で非人間的な紛争や経済戦争が起きていることなどを見ても分かるように、地球内部の世界は、膨大な豊かさと同時に、極めて大きな悪も秘めていると言わざるをえません。
そういう意味では、蠍座領域は深い暗闇に満ちた領域で、取扱要注意の世界であると言えます。
あるいは、蠍座は伝統的に生殖器と関わると言われていますが、性と生殖もまた、最も大きな苦悩や争いの焦点となるテーマです。
過去、蠍座的なエネルギーが強かった時代は、生殖に関わることと、霊的な世界とはバーターでしか得られないものでした。女性に対して多くの宗教が門戸を閉ざしていたのも、この名残だと言えるでしょうし、いわゆる魔女狩りなどもこの関連で考えることができるはずです。
白い鳩(聖霊)は、地球が聖化することで死と再生を遂げた新しい時代の地球由来の霊能力
ただし、蠍座として描かれているこの冥界と関連する霊能力が進化変容するならば、次の段階(未来)において、白い鳩(聖霊)へと変化するということが言われています。
白い鳩は、キリスト教神秘学では聖霊(Holy Spirit)のことです。キリスト教的に言うと、ペンテコステで弟子たちに下った天界からの聖なる力であり、弟子が使徒となって各地へ布教に行くきっかけとなったパワーです。
シュタイナーは、キリストの死と復活の出来事を「ゴルゴタの秘儀」と呼び、最も重要な人類史・地球史上の転換点であると考えています。
この「ゴルゴタの秘儀」では色々な変容が起きたのですが、一つ大きなことは、磔刑されたイエスから流れ出た血が地球の核に到達し、地球の核を太陽的な黄金の領域に変容させたということです。つまり、地球=太陽という状態になったということです。地球はもはや惑星ではなく、太陽(恒星)のように自ら光り輝くものになる、ということがこのゴルゴタの秘儀で行われました。
白い鳩として聖化された蠍座が示すのは、このようにして聖化された地球は、もはや人類に害悪をなすものではなく、天(太陽)と地(地球)の区別はなく、よって、地球の霊能力もまた、聖なるものへと変容した、ということです。
※ただし、ゴルゴタの秘儀の後ただちに地球が聖化されるわけではなく、完全に地球が太陽のような自ら光り輝く存在になるまでには、かなり長い年月が必要だとシュタイナーは考えています。
今要請されているのは、蠍から白い鳩への変容に向けて、古い霊能力を手放し(死)、新しい霊能力を得る(復活)こと
以上、蠍座の過去・現在・未来の変遷を主にシュタイナー・人智学系の思想に基づいて読み解いてみました。
ここで大切なのは、蠍座が未来には白い鳩になる、と言っても、この変化は指を加えて待っていたら起きるようなものではない、ということです。
私は、以前つぶやきで書いたように、今の時代は「星が人に語りかける時代から、人が星に語りかける時代へ」変化していると思っています。
ですので、この地上で生きる人間が、蠍座という星座の変容に貢献することが星々から要請されていると思います。
それは、個人のレベルでは、古い霊能力を手放して死に至らしめ、新しい霊能力を得ることにコミットすることではないかと思います。新しい霊能力とは、かつての蠍座=鷲のように再び高い視点から物事の連関を見通す力でありながら、同時に、未来の蠍座=白い鳩(聖霊)が持つような神の女性的な側面が持つ創造性(生殖)をも備えた霊的な力になるでしょう。
この意味で、蠍座は真に癒やされた子宮(地球的な生産力・生殖力)と関わります。完全に大地に根ざしていながら、同時に天上的でもある存在、これを、西洋神秘主義ではソフィア(叡智)と読んでいました。
次回以降の記事で、ソフィアという女神の神話と蠍座の変容の関係性について語っていきます。