2回目のサターンリターンとノード軸と冥王星の配置から考える、遅咲きの人生~アメリカの国民的画家・グランマ・モーゼス
占星術では、28~30歳くらいのときに起きるサターンリターンこそが人生の大転機になると言われています。しかし、ジェフ・グリーンの進化占星術では、ドラゴンテイルや冥王星のアスペクトによっては、2回目のサターンリターン(58~60歳くらい)になってはじめて、過去(生)のパターンから脱することができる人もいると考えます。いわば、遅咲きの人生を歩む人々です。
2回目のサターンリターンごろに人生の転機を迎え、晩年に花咲いた人生の例として、20世紀初頭に大活躍したアメリカの国民的画家・グランマ・モーゼスの占星術を題材に考えてみようと思います。
この記事の目次
グランマ・モーゼスってどんな人?
グランマ・モーゼスは、アメリカ人なら誰もが知っているというくらい有名な画家なのですが、日本ではあまり知られていないので、Wikipediaから引用させていただきます。
アメリカ人なら誰もが知る国民的画家。通称グランマ・モーゼス(モーゼスおばあちゃん)。
本格的に筆を握ったのは実に76歳の頃であった。緑の畑や牧場で楽しそうに働く農民や田園生活風景などのフォークアートを描いた。ニューヨーク州グリニッチの貧しい農家に生まれたモーゼスは12歳から奉公に出て、27歳で結婚。しかし子供を産んでも働き詰め。子供が10人できたがそのうち5人は幼児期に夭逝。70歳で夫を亡くす。バーモント州ベニントンへ移り住み、リュウマチで手が動かなくなってからリハビリをかねて油絵を描き始めた。絵を描き始めて3年後、ひとりのコレクターが彼女の絵に目をつけ、1940年に80歳にて個展を開く。この個展に大手デパートが注目して一躍名画家となる。89歳の時には当時の大統領ハリー・S・トルーマンによってホワイトハウスに招待されるほどである。101歳で死去するまで約1600点の作品を残した。
出典:グランマ・モーゼス
グランマ・モーゼスの出生図(ホロスコープ・チャート)
グランマ・モーゼスの出生図がこちらです。Astro.comのADB(Astro Databank)から取りました。正確性ランキングはBなので、月やアングルなどの位置は若干頼りない部分があります。
グランマ・モーゼスの出生図の解釈・分析
アメリカでは国民的画家として有名なグランマ・モーゼス(本名・Anna Mary Robertson Moses)は、75歳になってからはじめて画筆をとり、80歳で個展を開き、その後アメリカでは誰も知らない人がいないほどの有名画家になりました。
彼女のホロスコープを見ると、7ハウス獅子座のサウスノード(ドラゴンテイル)に金星が合。獅子座ですので、場合によっては貴族や王族のような特権階級であったかもしれません。
7ハウスであることから、社交というキーワードも浮かびます。美や芸術を好きなだけ享受することができる裕福で特別な過去生があったかもしれません。
7ハウスの金星ですので、美しいものや自分を特別なものとして扱ってくれる裕福な人間関係に囲まれ、自分自身がドラマの主人公であるかのような生活を送っていた可能性があります。
この金星には、2ハウス魚座の海王星がトラインを形成しており、芸術性が彼女の天賦の才能であることを裏付けています。
また、サウスノード獅子座には木星があり、オーブは広くなりますが合。裕福な過去生や人との良縁を示唆しています。7ハウス木星獅子座はパトロンや庇護者も意味します。グランマの人生では、幼少期に彼女に画材を与えてくれた父、66歳で亡くなるまでグランマの絵を褒め続けてくれた夫、そして彼女の画才を認めてくれた画商などの(男性)サポーターが彼女を画家として押し上げてくれました。
彼女が遅咲きだった理由を分析すると、グランマのノード軸に対しては3ハウス牡牛座の冥王星がスクエアになっていることが大きいと思います。
このように、冥王星がノード軸に対してスクエアになる配置の人は、冥王星の2つの衝動のうち退化の衝動(過去に執着する衝動)が強いと進化占星術では考えます。
そのため、この配置の人が自分らしい新しい人生を歩めるのは、2回目のサターンリターンの後になってはじめて(58歳~60歳以降)なのです。そして、2回目のサターンリターンの前は、過去(生)の精算や集大成を行う人生になることが多いです。
グランマは70歳後半になってはじめて画筆をとったと書きましたが、実はその前に、58歳のときに習作として一枚の絵を描きます。ちょうど彼女の2回目のサターンリターンのころでした。
グランマ・モーゼスの生涯を分析すると、NY州の貧しい村に育ち、12歳頃から女中として働きに出て、27歳で農場に嫁ぎ10人の子供を生みました。しかし、そのうち5人は幼児期に夭逝。66歳のときに夫を亡くすまでは家族のためにひたすら生きる人生で、夫亡き後は病弱な娘の世話をし、さらにその娘が亡くなってからは孫の世話に明け暮れます。
画家になる前のグランマにとって、牡牛座の冥王星は、上記のようなサバイバルな状況での生活や農村での自給自足的な在り方を、3ハウスは近所で完結する生活を象徴しているようです。しかし、画家になってからのグランマは、まさにこのアメリカ東部の貧しいけれどどこか懐かしい農村を題材にすることで3ハウス牡牛座冥王星を使っているように思えます。
グランマの画家としての人生は、時の権力者や有名人からの引き立てもありました。単なる田舎の画家で終わるのではなく、ニューヨークという都会で絵を展示・評価されていたことも特筆すべきポイントです。冥王星3ハウス牡牛座の対向点は9ハウス蠍座。時の大統領トルーマンと面会したり、アイゼンハワー大統領に絵を依頼されて描いたりと、影響力のある立場の人たちを介して広く公に出ていくことは、ローカルでプリミティブな3ハウス牡牛座の冥王星とバランスを取るのによい戦略でした。
グランマは、双子座の月と天王星が4~5ハウスで合、商才もあり独立心もありました。また、アセンダントに山羊座の火星が合、その近くに水瓶座ノースノードもありますので、描いた絵そのものだけではなく、田舎のおばあちゃんが遅咲きの画家になって社会で成功するというサクセスストーリーを強く打ち出していくことも、彼女の第2の人生の開花にとって重要でした。
まとめ:ノード軸に対して冥王星がスクエアの配置の人は、人生が遅咲きかもしれないから焦らないで。
いかがでしたか? グランマ・モーゼスのように、ノード軸に対して冥王星がスクエアの人の場合、前半の人生と、後半の人生でガラッと違う生き方をする可能性があります。つまり、人生が遅咲きになるかもしれませんが、焦らずじっくり待ちましょう。
冥王星がノード軸に対してスクエアの配置をお持ちの方は、自分のチャートの冥王星のテーマに人一倍しっかり取り組むと、後々ギフトがやってきます。グランマ・モーゼスは3ハウス牡牛座の冥王星。自給自足的な農村での生活の中で培った独特な表現手段が、後年絵画表現として結実することになりました。
追伸:グランマ・モーゼスの星読みについて音声にしました。