能動的に自ら生み出すものとして生きる~木星が増やしてくれたものを、本当の幸福として私達人間が使いこなすためのヒント
占星術で、木星は「増やす天体」であると言われます。ここから、木星を豊かさと結びつけて考えるのが一般的ですが、木星=ジュピター、ゼウスの一般的なギリシア神話では豊かさと直接関係がないように思えます。もしくは、擬人化されたゼウスは、次々に女神やニンフに手を出す好色な男神というイメージになっており、豊かさや豊穣=性的奔放さというような一面的に貶められたかのように思える表現をされています。
この記事では、増やす天体・豊かさを司る天体と言われているゼウスが、より古い時代においてどのように表現されてきたかということからさかのぼって、木星という天体が担う豊かさ・豊穣の意味を探り、木星の恵みを永続的な幸せに変えるコツを綴っていきます。
この記事の目次
神話以前の古代では、ゼウスは両性具有として描かれていた~自ら生み出す宇宙の質としてのゼウス
ギリシア神話では、神々は人格化され、男性神・女性神に分かれていますが、それよりも昔の神話以前の古代、ゼウスは両性具有者として描かれていました。
ゼウスは神話以前の古代、大きな乳房と男性の顔を持つ姿として描かれていたのです。
両性具有はそれ単体で命を生み出すことができるので、両性具有者としてのゼウスというのは、自ら生み出すことのできる宇宙の質を表していたのです。
ここから、木星が増やすとか生み出すという意味を強く持っているということが理解できるでしょう。
※両性具有者としてのゼウスの表現は、壁画等に残されていると言われています。
古代ギリシアでは、ゼウスの質が、生ませる男性原理(神々の王)とその原理によって様々なバリエーションで受胎する女性性(妻や女性)として表現された
時代がより現代に近づいて、いわゆる古代ギリシア神話が生まれた頃になると、人間たちは、ゼウスを両性具有者としてではなく、男性性を表現する神々の王として描きました。一方で、ゼウスの中にあった女性的な質(様々なものを生み出す質)は、ゼウスによって受胎する女神や女性、ニンフとして描かれました。
天文学上で言っても、木星にはたくさんの衛星があり、これらの衛星にはゼウスと交わった女神やニンフたちの名前がつけられていますが、まさに木星という質を考えたときに、ゼウスとゼウスの配偶者達は切っても切れない同一のものだと考えたほうが分かりやすいと思います。
木星的な豊かさとは、生み出し増やす行為の中にある豊穣~それを幸せにするのは人間の努力次第
占星術において、ゼウス=ジュピター=木星と考えたときに、いわゆる古代ギリシア神話の中に描かれている男性神としてのゼウスだけを考えてしまうと、どうしてその神話から豊かさとか豊穣という意味が導き出されるのか理解に苦しみます。
しかし、もともとの神話以前のゼウスを考えると、男性性・女性性を両方兼ね備え、活発に生み出す宇宙原理の体現者だったので、木星=豊かさ・豊穣という定義もしっくりきます。
このように、木星的な豊かさというのは、単純に「増やす」という行為の中にあるということだけは覚えておいた方がいいでしょう。
なぜなら、このようにして増えたものたちが、果たして幸せにつながるかどうかは、人間次第だからです。
木星が増やしてくれたものを、どんな理由であっても感謝できる形に作り変える能動的な努力が、木星の恵みを受け取るコツ
よく、「木星が自分の太陽星座にきたのに、そんなに幸せ感を感じなかった」というようなことがあります。
たとえば6ハウスのネイタル火星の上を木星がトランジットするときは、ただただ仕事が増えた・・・という状態になり、その6ハウスネイタルの火星に対してスクエアになっている3ハウスの月からすると、仕事に忙殺されて自由に遊べなかったと不満に思う、というような結果になることもあるというわけです。
ですが、木星が通過するときに受け取る「増加・拡大」のエネルギーは、それがどんな現れ方であっても感謝できる、というときには最大のラッキーになります。そして、木星の幸せが一過性のものではなくなり、持続する幸福へ作り変えられていきます。
上の例でいうと、この人は、もともと6ハウスの火星を強めたいと思ったからこそ、木星のトランジットをその時期に受け取っているわけです。そして、当然木星トランジットでは、火星がネイタルで形成しているアスペクトも余波を受けるため、月とのスクエアの質が目立ってクローズアップすることになるのは折り込み済みだった、ととるべきでしょう。
だとしたら、木星が刺激する天体が他の天体と厳しい角度を取っていて、その厳しいアスペクトが浮上してきそうな場合は、予めその質を意識的に修正するように努めていけばよいだけなのです。
つまり、火星と月のスクエアを建設的に使うことを考える努力をする、ということです。
例えば上の例の場合、もともと働くこと(6ハウス)と、自由に動き回ったりおしゃべりすること(3ハウス)の間に二律背反的な衝動があります。
例えばこの人が、普段の仕事がSEなどの机に向かってコツコツ黙って仕事をするような場合、3ハウス月が示すようなおしゃべりしたりうろうろすることは仕事に反した行為になってしまいます。しかし、もし6ハウス側の火星に木星がくると予め分かっていて、それをラッキーに変えようと思うなら、SEのような内勤の仕事だけではなく、営業職のような要素(3ハウス的な)を取り入れる、という形で仕事を増やすことで、幸運を拡大させていくことができるでしょう。そうすることで、この人の3ハウス月の衝動が上手に活かされることになります。
このように、木星の幸運パワーを最大限に受け取るためには、木星が増やしてくれたものを、(人間の狭い視野のレベルでは一見辛いことや不幸なことに思えても)何が何でも幸運に変えるぞ!と決意して創意工夫・努力することなのだと思います。
つまり、神話以前の両性具有者のゼウスのように、自家生殖できるような態度こそが、木星を最大限に幸福に使うヒントなのだと思います。
まとめ:木星は、絶対に幸せしか与えないと思おう。そこから自分で能動的に望む形に作り変えることが、ラッキーが永続する幸福に変わる
というわけで、2018年11月8日から木星が射手座に入りますが、支配星回帰ということもあって木星の増やす・拡大するパワーが強まっていきます。
自分の狭い視野(顕在意識やインナーチャイルド)が思う「ラッキー」と、高次の自分(ハイヤーセルフ的な)が深いレベルで望む「幸福」がしばしばズレていることがあるように、木星が与える増加・拡大は、自分の意図しないものになる可能性もあります。
ですが、たとえそうであっても、それは偽装した祝福(disguised blessing)なのだと思いましょう。
実際、ギリシア神話のゼウスは、色々な存在に姿を変えて多くの女神や女性、ニンフたちと交わります。その際、これらの女性たちは必ずしもゼウスを受け入れる準備ができていたわけではなく、抵抗していた者もありませんでした。それでも、これらの女性たちがゼウスとの間に生んだ存在たちは、英雄や神々となり、様々な活躍をして世界に豊かさをもたらしたのです。
木星射手座時代が自分に与える影響について、後日ハウス位置別に分析を書いていきたいと思います。