占星術コラム

蠍座の季節と、死者と生者すべての母なる冥界の女神(Urmuetter)~ハロウィーン、死者の祭、立冬&イーグルズゲート、ファウストの母たちの国へ

10月31日は毎年ハロウィーン。日本でもすっかり津々浦々で祝うことが定着しましたが、死者の祭と言われるハロウィーンは、いかにも蠍座に太陽が入る季節らしいイベントだと言えます。

実は、ハロウィーンだけではなく、占星術や古今東西の祝祭の歴史を紐とくと、この時期(10月末から11月初旬)は、死者・冥界をテーマにしたお祭やイベントがあるのです。日本では、立冬の季節でもありますが、この時期、いわゆる太古の大地母神的なエネルギー、地球の内部(冥界)にいるイザナミ的なエネルギーが強まる時期です。

この時期、死者や幽霊のエネルギーが強まりますが、その背後では、生命の中でもこの地球という物理的な物質(materie)が生まれ、そして還っていく地球内部の扉が開いているのです。この世界を、ゲーテはファウスト第二部で「母たちの国」と呼びました。

この記事では、この一連の流れについて綴っていきます。

10月末~11月初旬の重要な節目:ハロウィーン、死者の祭、万聖節、立冬&イーグルズゲート、ファウストの母たちの国へ

以下、10月末から11月初旬にかけての重要なイベントをリストアップしてみました。

  • 10月31日 ハロウィーン
  • 11月1日 万聖節&死者の祭(メキシコ)
  • 11月6日~7日ごろ 立冬&イーグルズゲート
  • 11月9日 ファウストの母たちの国へ

ここで、ハロウィーンと万聖節、メキシコの死者の祭については、割と知られているかなと思うので、いったんこの記事での説明は割愛します。そのかわり、あまり知られていない立冬&イーグルズゲートと、ファウストの母たちの国のエネルギーについて説明していきます。






11月6日~7日ごろ 立冬&イーグルズゲート

一方、日本では立冬として知られている時期、太陽がトロピカルゾディアックの蠍座15度、黄経255度に入ります。

以前、ライオンズゲートの記事で、固定宮15度(牡牛座15度、獅子座15度、蠍座15度、水瓶座15度)に太陽が入るときは、ルディアいわく、アバター降臨のゲートが開くという話をしました。つまり、宇宙からのエネルギーがこのゲートを通じて地球に流れ込んでくるのです。

ライオンズゲート

上記関連記事でも書きましたが、日本でもサビアンシンボルで知られているディーン・ルディア(Dane Rudhyar)のAstrology of Personalityから以下引用します。(※翻訳文の著作権は当サイトに帰属します。引用される場合は必ず当サイトへの言及を入れてください)

エネルギーが最も集中し凝結するポイントは、45度、135度、225度、315度になります。あるいは、通常のゾディアックの表現で言うと、牡牛座15度、獅子座15度、蠍座15度、水瓶座15度になります。

これらのポイントを知っているオカルティストたちがいました。これらのポイントは、アバターが降下する4つのゲート(門)(the Four Gates of Avataric Descent)と呼ばれました。

ここで言う「アバター」とは、古代の用語で言うと、宇宙のエネルギーのリリースという意味になります。このフレーズの意味はかなり明確だと思います。これらの4つのゲートは、4つのシンボリックな生き物によって象徴されます。つまり、牡牛、獅子、鷲、天使です。それぞれのゲートは、特定のタイプのダイナミックなリリースが起きるところであり、特定のパワーの光線が差し込む入り口です。つまり、「イニシエーション」のパワーがリリースされるところになります。

1年のサイクルの中で、この「アバター」ポイントが起きる(ゲートが開く)のは、毎年およそ5月6日、8月8日、11月8日、2月5日になります。この時期、春分・秋分、夏至・冬至で集まってきたエネルギーが現実化しリリースされ、有効なものになります。

数秘を学ぶ者にとって興味深いのは、このサークルの8つのポイントに関連する数を1桁になるまで合計すると「9」の数秘になるということです。 (45, 90, 135, etc.).

バハー・ウッラー(Baha’u’llah)はペルシャの偉大な預言者であり、水瓶座の時代のアバターだと多くの人々が考える人物ですが、彼は11月12日生まれです。つまり、鷲ポイント(蠍座15度)に近い位置に太陽が来るときに生まれています。このようなときに生を享けるというのは、「普遍宗教」の提唱者にはとてもふさわしいことです。バハー・ウッラーは、まさに数秘の9を体現するメッセージを発しました。

つまり、立冬=蠍座15度に太陽が入る時期は、イーグルズゲートが開く時期であり、数秘9で表されるような秘教的な蠍座のエネルギーが強まる時期なのです。

この時期、蠍座15度という度数は、蠍座が対向サインの牡牛座の質を取り入れて一瞬不安定になる(蠍座らしくなくなる)時期です。

牡牛座が物質化(materialization)のサインであるのに対して、蠍座は脱物質化・物質からの解放(dematerialization)のサインです。

蠍座は本来、目に見えないものを扱うサインなのですが、蠍座15度付近では、ここに牡牛座の物質化のエネルギーが吹き込むので、この辺りの時期というのは、本来目に見えないもの(死者や幽霊、冥界、秘められているもの、隠されているもの)が一瞬物質化して目に見えてしまう、という出来事が起こりやすい時期だと言えるでしょう。

※ちなみに、蠍座なのにどうしてイーグル(鷲)なの?という疑問が湧いてくるかもしれません。実は、過去において蠍座は鷲(イーグル)として表現されていました(今でもタロットカードなどにその名残があります)。詳しくは、蠍座というサインの3変容というテーマで記事をまとめましたので参考にしてください。






11月9日 ファウストの母たちの国へ

そして、ここから先はあまり知られていない話なのですが、シュタイナーが、1924年バイオダイナミック農業講座開催のホスト役になったカイザーリンク伯爵夫人に語った秘教的な会話の中で、11月9日のことを、ゲーテがファウスト第二部で語られる「母たちの国」につながる日だと述べています。

具体的に言うと、下の図に書いてある6つの重要な祝祭のうち、春の聖霊降臨祭(通常は牡牛座の季節)と対になる祝祭、11月9日のファウストが母たちの国へ行った日のことだというのです。つまり、ちょうど蠍座の季節であり、立冬直後くらいのことですね。

ファウスト第二部の母たちの国というのは、地球のありとあらゆる命に形態を与えると同時に、それらの命が形態を失って帰還する場所であり、オルフェウス教が崇拝した3神に相当するものだとシュタイナーは考えています。そういう意味では、人間的な意味での女性性を超越した、もっと原初的な女神、日本神話ではイザナミ的な根の国の存在たちだと言ってもいいかもしれません。

なお、ファウスト第二部の母たちの国へ行くシーンがどういうシーンかというと、神聖ローマ帝国の皇帝の財政難を救って信頼を得たファウストが、新たなミッションとして皇帝からギリシア神話の中でも一番の美女であるヘレナと一番の美男であるパリスを呼び出してきなさいと言われたことから始まります。

そのためには、ファウストは、その名を聞くだけで戦慄と恐怖を催す「空間も時間もない母たちの国」へ行って、あらゆる形態を呼び出すための三本脚の香炉をもって来なくてはならなくなります。悪魔であるメフィストフェレスであっても恐れるこの「母たちの国」に行って、無事にファウストが帰って来られるかどうか不安になりますが、勇んでこの「母たちの国」へ出発します。そしてファウストは、母たちの国から香炉を持って戻ってくることに成功します。

メフィストフェレス:
実は極の深秘は言いたくないのです。寂しい所に
こうごうしく住んでいる女神達がある。
その境には空間もなければ時間もない。
その事を話すのは一体不可能なのだ。
それは「母」達だ。

ファウスト(驚く。):母達か。

メフィストフェレス:
身の毛が弥立ちますか。

ファウスト:
母達、母達。なんと云う異様な名だろう。

メフィストフェレス:
実際異様な連中ですよ。無常の人間に知られずに
隠れていて、わたし共も名を言いたくない神です。
その家へ往くには、あなたよほど深く摩(ず)り込むのです。

出典:森鴎外訳・ファウスト(青空文庫)

この母たちの国は、イメージの中では地下・冥界ですが、メフィストフェレスの以下の言葉にもあるように、すべてのものが形態を失い、何も聞こえず・何も見えず、また、下っていくようでもあり上っていくようでもある(空間を超越している)という場所で、とにかくなんとも言えない身の毛もよだつような戦慄を覚えるところなのだそうです。

ファウスト:
そこへ往く道は。

メフィストフェレス:
道はありません。歩いたもののない、
歩かれぬ道です。頼まれたことのない、頼みようのない所へ
往く道です。思い切って往きますか。
貫木(かんのき)や錠前を開けるのではない。
あなたは寂しさに附き纏まとわれます。
一体寂しいと云うことが分かっていますか。

(中略)

メフィストフェレス:
しかし大洋に泳ぎ出して、その沖で
際限のない処を御覧になるとした所で、
溺れて死ぬる懼(おそ)れを抱きながらも、
波の立居たちいは見られますね。兎に角何か
見られますね。凪いだ海の緑を穿うがつ
鯨のようなデルフィインも見えましょう。
雲のたたずまい、月日や星の光も見えましょう。
それと違って、とわに空虚な遠い境には
なんにも見えません。自分の跫音あしおとも聞えません。
体を靠(もた)せて休むだけの固い物もありません。

(中略)

メフィストフェレス
そんなら降りておいでなさい。升(のぼ)っておいでなさいと
云っても好(い)い。同じ事だ
既に生じているものに
背せを向けて、解き放されたものの世
へおいでなさい。
もう疾っくに無くなっているものを見て
お楽しみなさい。雲の往来(ゆきき)のように入り乱れた
事にお逢いでしょう。

出典:森鴎外訳・ファウスト(青空文庫)

ファウストが持ってくるべき香炉(森鴎外の訳では五徳)は、母たちの国の一番深い底にあります。そこは、形態を持っているものが存在せず、形態の影(森鴎外の訳では象)だけが存在している場所なのだそうです。

メフィストフェレス:
一番深い、深い底に届いたと云うことは、
焼けている五徳を御覧になると分かります。
その火の光で母達が見えるでしょう。その折々で
据わっているのも、立ったり、歩いたりして
いるのもありましょう。所有(あらゆる)造られた物の象(かた)が
周囲まわりに漂っている、創造、改造の神達で、
永遠なる意義を永遠に語っておられるのです。
神達には象(かた)しか見えないから、あなたは見えない。

随分あぶない事ですが、腹を据えてずっと
五徳の所へ往って、その鍵で五徳に障って
御覧なさい。

出典:森鴎外訳・ファウスト(青空文庫)

そして、無事に母たちの国から帰還したファウストが語る以下のシーンは、母たちの国から持ち帰った香炉から立ち上る煙の中から、ヘレナとパリスを召喚するシーンです。

ここでは、かつて地上で命を持って存在していたものたちが(死んで)形態から解き放たれたあとで(蠍座的な脱物質化=dematerialization)、すべてを従える父なる力(森鴎外の訳では万能の権威たる御身等)によって再び息を吹き込まれる(牡牛座的な物質化=materialization)様子を描いているといえるでしょう。

ファウスト(荘重に。):
無辺際に座を構えて、永遠に寂しく住んでいて、
しかも集(む)れいる母達よ。御身等の名を以て己は行う。
生きてはいずに、動いている性命の象(かた)が、
おん身等の頭(こうべ)を繞(めぐ)って漂っている。かつて一度ひとたび
光明(こうみょう)と仮現(けげん)との中に存在したものは、悉(ことごと)く
ここに動いている。永遠を期しているからである。
万能の権威たる御身等は、それを日の天幕の下、
夜(よ)の穹窿(きゅうりゅう)の下に分けて遣られる。あるものは
生(せい)の晴やかな道が受け取る。あるものは大胆な
術士が貰いに行く。そしてその術士は
人の望むがままに、赤心を人の腹中に置いて、
おおように、吝(おし)まずに不思議を見せるのである。

出典:森鴎外訳・ファウスト(青空文庫)






まとめ:ハロウィン・万聖節・死者の祭から立冬・イーグルズゲート、そしてファウストの母たちの国への流れは、死者への敬意と新しい生命を生み出す女神的な地球の内部への畏敬の念を抱く時期

少し長くなりましたが、ハロウィン~立冬・イーグルズゲートを経て、ファウストのは母たちの国への流れは、蠍座15度前後という、牡牛座の力を受け取った蠍座のエネルギーを体験する流れと重なっています。

この時期、死者や幽霊が身近に感じられる理由は、これらの蠍座的な脱物質化(dematerialization)された存在たちが、対向サインの牡牛座的な物質化(materialization)のエネルギー受けとって、あたかも現実に存在しているかのように一瞬浮かび上がってくる時期だと言えるでしょう。

以前、アリーズポイントの記事で書いたように、固定宮15度である立冬で流れ込んだエネルギーは、アリーズポイントである活動宮0度の冬至で具現化・顕在化します。つまり、クリスマスです。

クリスマスについての秘教的な意味については別記事で書いていきますが、立冬前後に私達が死者と出会うのは、クリスマスで起きる新しい命の誕生のために、質量保存の法則が適用される物質世界であるこの地球では避けては通れない必然的な道なのです。

物悲しく寂しく、そして戦慄や恐怖を呼び覚ます「母たちの国」から立ち上ってくる煙の中には、これまで地球が生み出してきたすべての死者の命とこれから生まれる生者の命が、幻影としてうごめいているのです。かつてこの地上で生きていたすべての生命は虫一匹にいたるまで一切消えることなくこの「母たちの国」に戻り、再び新しい命を得るまでまどろんでいるのだと言えるでしょう。

余談ですが、ガーデニングや畑などをやっていると、土=死者たちの体から生命が生まれるという神秘の中に、蠍座と牡牛座の間で交わされる地球の生命の永遠のループを感じます。

立冬で私達は、ありとあらゆる死者への厳粛な敬意と、この地球の内奥のエネルギーへの畏敬の念を強めることで、最もよくこの「母たちの国」の力を取り入れることができるでしょう。

参考文献(ドイツ語・英語)

>>>Koberwitz 1924

>>>Agriculture Course: The Birth of the Biodynamic Method (Classic Translation) (English Edition)

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